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[6:宇宙戦艦ヤマト2199の試練]プリキュア時代の「男の子アニメ」の困難 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

『ドキドキプリキュア』の総括記事の中でも少し触れましたが、2013年には、往年の『宇宙戦艦ヤマト』を今風にリメイクした『宇宙戦艦ヤマト2199』が(イベント上映→パッケージソフトウェア発売という流れの中で)地上波でテレビ放送されることとなりました。

旧作『宇宙戦艦ヤマト』は、たしかに一世を風靡した作品であり、日本のアニメブームを語るうえで避けて通ることのできない重鎮と言える存在です。

ただ旧作が制作されたのは1974年。
その時代的な限界か、全体像を概観しただけでもジェンダー観点からの評価には耐えないことが明らかな作品でもあります。

ヤマト乗組員が紅一点の森雪以外はすべて男性で、必然的に艦内での「ケア労働」および「補助的労働」は全部 森雪の役目となっています。

あまつさえロボットのアナライザーにスカートめくりをされるなどのセクハラ被害に遭ったりしますし、その点を直訴されたときの沖田艦長の対応もまた(現実の企業社会で女性構成員がセクハラ被害を訴えても男性上司が真剣に応対しない事例を引き写したように)のらりくらりとしたものだったりするのです。

そうして、全体を貫くテイストはあくまでも「戦う男、燃えるロマン」(←主題歌2番の歌詞[作詞:阿久悠]より)。

山場であるドメル将軍との艦隊戦などは、まさに「男と男の戦い」といった雰囲気で価値あるものとして描かれたりしていたものです。

そんな『宇宙戦艦ヤマト』のリメイクである『2199』が、多少の設定とストーリーの改変を施され、絵柄がキレイになったくらいで、見る価値のあるアニメに生まれ変わるのかどうかは、はなはだ疑問でした。

いっそのこと、女子が嗜む武道・宅配道に勤しむ黒猫女学園の女子高校生たちが、廃校の危機を回避するために16万8千光年の彼方まで荷物を集荷に行って戻ってくるミッションクリアに挑む物語『宇宙宅急便クロネコヤマト』!」くらいまで翻案する(…それはソレで見てみたい気も(^o^;))ならともかく、『2199』は旧作に忠実なリメイクというふれこみです。

しょせん骨組みは旧作の『宇宙戦艦ヤマト』。それをちょっとリフォームしたところで、あたかも「戦艦大和」を「宇宙戦艦ヤマト」として甦らせるがごとく、上手いこと今どきの鑑賞に耐える『2199』に再生できるものでしょうか?

ましてやオンエアされるのは日曜日の夕方。
同じ日の朝には『ドキドキプリキュア』も放映されており、かつての『ヤマト』と同じ「テーマは愛」を標榜したうえで、相応のクォリティを保った物語が進められているのです。

朝にソレを観たばかりの視聴者をじゅうぶんに納得させるには、旧作のような、勢いでガミラスを全滅させ、すべてが終わった後になってから、とってつけたように「僕たちがすべきことは戦うことじゃなくて愛しあうことだった!」というようなセリフを入れてお茶を濁す展開では、到底無理なことも明白です。

生半可な姿勢でのリメイクだと、映像だけは美しい、見るに耐えない作品が1本出来上がるだけ。
そうならないように、本当にしっかりと取り組むのだとしたら、そのハードルは相当に上がってしまっている――。

そんなわけで、元々、旧作にはハマり、続編の劇場版『さらば』には涙し、しかしそのラストを改変した『2』以降節操なく続編が作られ続けて興ざめして以来、『ヤマト』はすでに自分の中では「終わコン」となっていたワタシとしては、『2199』にもさしたる期待を抱くことはありませんでした。


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§画像は放送画面より。この一連の記事中同じ


はたして、放送開始から数話にわたってチラ見したところでは、その予測はおおむね外れていませんでした。

たしかに映像はキレイです。
旧作の設定の杜撰だった部分はしっかり造り直され、全体として今風のアニメに仕上がっています。

そして「ジェンダー」面でも今の時代に合わせた改善が図られています。
数的にも質的にも女性乗組員が増強されていました。

それでも、この時点では、あくまでも類型的な「女性の社会進出」描写、男目線の男女共同参画。「ジェンダーの問題も配慮してあげましたよ」という恩着せがましさが、かえって鼻につくような印象さえしないではありません。

当初は「女性らしい」部署に配属された山本玲が念願どうりに艦載機パイロットに配置替えされるまでのエピソードも、深夜アニメのようなカッとび方とは、まだまだ乖離がある凡庸さを感じました。

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そうして、端々に滲むホモソーシャルのマッチョな価値規準。

やはりしょせんは「ニッポンの男のアニメ」。
その骨組みはいかんともしがたいのでしょうか。

沖田艦長も、油断すると「これは男と男の約束だ」みたいな台詞を口にします。

話数としては後半にあたる、ドメル将軍との決戦編のくだりも、その意味では旧作のテイストがほとんど忠実に再現されることになります。

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ドメル将軍が、決戦を前に、待ち伏せするためにヤマトの航路を推理する際などは、「もしヤマトの艦長が、私が思ったとおりの【男】なら……」なんて言ってます。
その数話後ではデスラー総統までが、人質状態の森雪に、「ヤマトの艦長はどんな【男】だね?」と尋ねたりします。

しかし、その時点ではドメルもデスラーも、沖田艦長に会ったことはないわけですし、その人物像についての情報もほとんど得ていない(だからこそ推測や質問をしている)わけです。

それなのに、なぜ【男】と決めつけている!?

……………。

いゃー、コレ、ヤマトだから結果的には正解してますけど、もしも相手が「弁天丸」だったりしたら、どうするつもりだったのでしょう!?
顔を合わせたときにめっちゃ気まずいでっせ(^o^;)。

「ど~も、加藤茉莉香でーす。コスモリバースシステム、受け取りにあがりました~」

冗談をさておいても、女子高生海賊・加藤茉莉香の弁天丸船長ぶりを総合評価すれば、沖田艦長にも決して引けを取りません。

そういう女性キャラクターが、日本のアニメ界にはすでに存在するにもかかわらず、このような決めつけをセリフに織り込んでしまうのは、あまりにも不用意だとの思いを禁じえません。

そういった雰囲気を、最初の数話で感じたワタシは、やはり『宇宙戦艦ヤマト2199』には見る価値ナシ――、そういう判断に至りつつあったのです。


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そんな評価が覆ったのは「第10話:大宇宙の墓場」でした。

※【参考】NAVERまとめ《宇宙戦艦ヤマト2199》旧作との相違点[第10話 大宇宙の墓場]
 → http://matome.naver.jp/odai/2137050341406711201

この回は、ヤマトが次元断層に陥ってしまい、偶然近くにいたガミラス艦と協力しあう以外に脱出の方法がない……という状況になるのです。

さりとて敵を信頼しても大丈夫なのか?
そんな約束が本当に成立するのか??

そんな中、交渉のためにヤマトへやって来る1人のガミラス人。
それが若き女性将校、メルダ・ディッツ少尉でした。

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ここで、それまでは「謎の敵」であったガミラスが、地球人と同様の人間体であることが、作中の地球側にとっては初めて判明します。
しかも女性! …と驚くヤマト乗組員も少なくありません。

旧作での、このシークエンスに該当するエピソードでは、ガミラス人の捕虜は「普通に」男性でしたから、ここでもリメイクにあたってのジェンダー配分の再考が見られます
(次元断層とそこからの脱出という枠組みの部分に関しても、旧作とは異なる経緯に変えられています)。

そしてこれが、兄を殺されガミラスを憎んでいた山本玲と、ガミラス将校メルダ、『2199』へのリメイクによって初めて女性キャラとして配置されることになった2人の邂逅でもあったのです。

仇敵だと思っていたガミラスは「同じ人間」で「同じ女性軍人」、しかも今から協力しあう関係。
はたして、そんな敵だったはずの相手と確執を乗り越えて手を取り合い親交を深めることが可能なのか!?

……………。

驚きました。

なんとこのとき提示されたこれらの命題
すなわち「敵との約束は信頼してもよいのか」と「敵と仲よく友だちになれるのか」。

同じ日の朝の『ドキドキプリキュア』とまるカブりではないですか!!

※【参考】東映アニメーション公式サイトあらすじ
「第19話 クリスタルをかけて!ジコチューのゲーム!」
 → http://www.toei-anim.co.jp/tv/dokidoki_precure/episode/summary/19/

まさかの『宇宙戦艦ヤマト2199』がプリキュアと同じ題材に挑戦っ!?

たしかに、同じ日にそこまで内容が重なったのは偶然かもしれません。

それでも、この一件で、『2199』がプリキュア的な何かに取り組もうとしているという手応えは明らかになったと言えるでしょう。


そう思って、ひとつ前の回「第9話:時計仕掛けの虜囚」を見直すと、これは旧作には直接対応するエピソードがないオリジナルなストーリーだったのですが、テーマ的には「ロボットにも心はあるのか?」という問題を扱っているという点で、上述したアナライザーが森雪にスカートめくりを仕掛ける回と対応します。

※【参考】NAVERまとめ《宇宙戦艦ヤマト2199》旧作との相違点[第9話 時計仕掛けの虜囚]
 → http://matome.naver.jp/odai/2136991241174413201

つまり旧作当時は、人間と同様の感情があることを示唆するためにアナライザーにさせることがスカートめくりだったわけです。
これは往時の制作者の発想の貧困と言わざるを得ないでしょうし、1974年というのがそうしたセクハラ行為描写がまったく問題視されずに許容される時代背景だったのも確かです。

しかしそんな「ロボットにも心はあるのか?」という同じテーマの回が、旧作のようなセクハラ回から、『2199』では9話の見事に叙情的で美しいエピソードに改変されてたあたりからも、制作陣がリメイクにあたって何をすべきかよくわかっていることを窺えたかもしれません。


そうして、11話で反目を乗り越えて一定の親睦を深めた山本玲とメルダは、後半で再会した後は、さらに信頼関係を強めていき、地球とガミラスとの和解へ向かう流れの象徴的な存在となります。

他の女性キャラも含めた関係性描写も、どんどん厚くなっていきました。

そして歴史に残る22話。
山本玲とメルダたち女性キャラがヤマトの食堂に集って、みんなで特製のパフェを食べながら女子トークを繰り広げるという場面が描かれます。

「地球のため、も大事だけど、友だちといっしょにチョコパフェ食べたりする、ごく普通の日常が大切で、それこそが何よりの平和……」
初代『ふたりはプリキュア』の第1期エンディング主題歌では、後々のプリキュアシリーズ全体にも通ずる、そんな趣旨が歌い込まれているように、【パフェ】を囲む女子というのは、まさに象徴的です。

『宇宙戦艦ヤマト2199』が、もはや旧作『宇宙戦艦ヤマト』ではない別の何かに変容したことが確実になったことを高らかに宣言するシーンだったと言えるでしょう。

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この後のガミラス本星での最終決戦では、メルダの協力のおかげもあって、ヤマトは有利に首都攻略をすることができます。
余裕のある状態ゆえに、民間人の被害も抑えられ、旧作のように必死の反撃を続けた結果ガミラスを壊滅させてしまうこともありません。

そして逆に、狂気にとりつかれたラスボス状態のデスラー総統によって破滅のピンチに瀕してしまった首都を、(ヤマトだけとっとと脱出するという選択も可能だったにもかかわらず)波動砲で危機を除去し、以てガミラスの大勢の人々を救うという結果をもたらしたのです。

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あと、山本玲×メルダの他にも、地球・ガミラス両陣営間での女性キャラの関係描写として森雪×ガミラスの諜報を司っていたセレステラの交流がありました。

地球への途に就いたヤマトが、じつはまだ生きていたデスラーの追撃に遭い、艦内で白兵戦となった際に、森雪が命を落としてしまう原因は、旧作では「だって古代くんが死んじゃう」と試運転が済んでいない「放射能除去装置」を動かしたことですが、『2199』では、銃撃からセレステラを庇った結果になっています。

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すなわち、女性キャラにとって守るべき大切なものが、異性愛的な価値規準に基づいた「男」よりも、女性どうしの関係性のほうに改変されたのだと読むことが可能です。


というわけで『宇宙戦艦ヤマト2199』、たしかにいわゆる「熱い男のドラマ」が見たい層に対してはアリバイ的に旧作そのままの昭和仕様と思える部分も入れていましたが、つまるところ特に中盤から終盤にかけては、物語を動かしていく鍵となったのは、女性キャラどうしの関係性進展を取り巻くものでした。

大切なのは、相手との関係性の中で相互に配慮しあい、気持ちを尊重しあい、ときに癒しあうこと。
そしてそんな中で、より多くの人々との間で共感・協調・共生の輪を広げていくことこそが問題解決の糸口となることが提示された展開は、まさに「ケアとキュア」に立脚した物語です。

そうして、そこで何が描かれたのかを端的にまとめれば……
敵とも友だちになる
敵陣営の人々をも助ける

……………。

これはもう、

なんというプリキュア展開! (^o^;)

地球とガミラスの間で起きた紛争を、おそらくはプリキュアであればこんなふうに解決したにちがいない、その様子を『2199』は、『宇宙戦艦ヤマト』の枠内で可能なかたちで描き出したのでした。


こうして、旧作に忠実なリメイクという体裁を維持しつつ、旧作とはまったく異なるコンセプトの別の物語に生まれ変わった『宇宙戦艦ヤマト2199』

誤解を恐れずに極論すれば、『ヤマト2199』は【宇宙戦艦ヤマトの皮を被ったプリキュア】だったと言えるでしょう。

  


◎そんなわけなので、2014年12月に公開されるという『宇宙戦艦ヤマト2199』を受けて制作される劇場版新作、その内容はもう『2199』のストーリーをプリキュア風に再解釈したオリジナルアニメでイイんじゃないかなという気がしてきました(^^ゞ
サーシャとユリーシャというイスカンダル王国から来た妖精に請われてユキ、マコト、ユリア、アキラらが「伝説の戦士」に変身、ガミラスランドの繰り出すユウセイバクダーンと……w
てゆーか、仮にそこまでの改変を加えたとしても、『2199』の基本的なストーリーラインは維持できそうなところが、もはや何をか言わんやですね。


◎ヤマトがイスカンダルまで受け取りに行くのが、旧作の「放射能除去装置」から『2199』では「コスモリバースシステム」なるものに変更され(その理由はいろいろあり、各種の大人の事情が絡んでいることも推察されるものの、旧作のように海が干上がり生態系が壊滅してしまった地球から放射能だけ除去しても元のような青い地球になるのは無理なので、それも考慮すればやはり正しい改変ということになる)ましたが、その設定もまた、まさかのプリキュアで敵を倒したら破壊された箇所も元どおりになる、いわゆる「謎修復」を、もっともらしい科学的説明をつけて装置化したものとでも呼べるものだったりしました。

 


[5:機動戦士ガンダムの隘路]プリキュア時代の「男の子アニメ」の困難 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

さて今年・西暦2014年は『機動戦士ガンダム』35周年でもあります。
さしずめ「宇宙世紀0114年」ということになるでしょうか(^^)。

ウルトラマン、仮面ライダー、そして戦隊シリーズにくらべても多少は歴史が浅いガンダムですが、ここまで来ると、それももはや有意な差とは言い難いかもしれません。

ガンダムシリーズもその後数多くの作品が作られて今に至っていますので、やはりすでに日本を代表するシリーズの一角を占めていると言ってよさそうです。

では、そんなガンダムシリーズへのプリキュア要素導入は、いったいどのような現状なのでしょう?

端的に言って、一概には語れません。
作品ごとにさまざまなバリエーションがありますし、物語の構造も複雑で難解な度合いが高いですから。

大枠としては、リアリティにこだわって戦争を描いてきたガンダムシリーズでは、モビルスーツは軍の所有物ですし、作中の戦いもまた「公」的な「正義」に基づく面が基底にあるのは否めません。

その一方で、モビルスーツの搭乗者名鑑をひもとけば女性パイロットも少なくなく、その内実はともかく、書類上の「男女共同参画」具合においては戦隊シリーズをも凌ぐ勢いだったりもしますから、そこに「女性的な視点の物語」を描き出すための可能性が常に潜在していると読むことも不可能ではないのです。

また初代ガンダム第1話を見なおしても、アムロ少年がガンダムに乗り込む最大の動機は「みんなを守りたい」気持ちになっています。
その後の中盤の回では、粛々と戦争を進める軍の論理にクレームをつけたために、軍のエライさんからアムロが殴られる描写なども、「正義と秩序」と「ケアとキュア」の葛藤を、じつは描き出していたと見ることもできるでしょう。


 


ただ、実績として今のところは、『ウルトラマンギンガ』の如く大胆にプリキュア的要素を取り入れたガンダム作品は現れていません。

「高校生が主人公の、学園もの要素を導入したガンダム」など、やろうと思えばじゅうぶん可能なはずなのですが、なかなか思い切って踏み切れないのでしょうか。

強いて言えば『機動戦士ガンダムAGE』の16~18話、いわゆるアセム編の冒頭の3話が、それに近いものを描いていました。

なかなか評判は芳しくなかった『ガンダムAGE』ですが(私も女性キャラの扱いなどの観点からはかなり批判しました)が、その中にあって、この16~18話は総じて好評だった印象があります。

やはりここにこそ、今後のガンダムシリーズの可能性が秘められているのではないでしょうか?

………やっぱり僕の妹はガンダムに乗れるかな(^^ゞ


 


あと、2013年10月~2014年3月に放映された『ガンダムビルドファイターズ』も、ガンダムシリーズの新機軸を拓いたと言えそうです。

ことに「ベアッガイ」の人気などには、いろいろな面から意義があるのではないでしょうか。


 



◎せっかくなのでこの機会に少しクライマックス部分を書いてみました(^o^;)
『 僕の妹はガンダムに乗れる 』
第12話「【最終回】生きるのをあきらめないで!
      今こそ宇宙に心の花を咲かせよう」 by 佐倉智美

  (前回まで)
 [ 第1話第2話第3話第4話~


「やめて、ユリナ。もうやめて!」
ユノアはガンダムのコクピットから叫び続ける。
その間もユリナが搭乗したフォーンファルシアから放たれたフローラルビットからのビーム攻撃が宇宙空間を切り裂いていく。
コロニーに、みんなの大切なトルディアに当たったりしたら大変だ。
「ユリナ、目を覚まして。こんなことしたって何にも……。今なら間に合うよ。もう一度いっしょにアタシたちとと……」
通信回線がユリナの側から切られることはなかった。
「キレイごと言わないで! アナタに何がわかるの!? 私のこの気持ちなんて誰にも……」
ユリナの言葉に続くようにフローラルビットの一群がガンダムに向かってくる。
「ユノア、囲まれたらヤバいよ」
後席のカノンが言うのとほぼ同時にユノアはジェネレーターの出力を上げた。
「ヤバい、ヤバい」
「大丈夫だよ、ハロ」
ホリゾンタルインテグレーションAGEデバイスによって進化した、複座式のガンダムAGE-XPエンゲージの性能には余裕がある。
大きめの機体にはなったが動きは敏捷性が高まっているとユノアは感じた。
装甲が物理攻撃に耐える力も増しているはずであった。
それでもビームの直撃を避けながら、フォーンファルシアに近づいていくのは容易ではなかった。
「ユノア、もう引け。こうなったらもはやこれは軍の仕事だ。それしか……」
戦艦ディーヴァのブリッジにいる父・フリットからの通信が入った。
「ダメ! それはダメ、お父さん、もう少し……もう少しだけ待って!」
「ユノア!」
「わかってる。でもこれは……アタシがやらなくちゃいけないことなのっ」
「いかん。これは命令……」
そんなフリットの肩をたたいて制止する者がいた。
「父さん」
「アセム」
「もう少し、ユノアたちに任せてみようよ」
「どういうつもりだ。お前、それがどういう……」
「わかってる。大事な妹が心配なのは父さんと同じだよ。でも俺、見てみたくなったんだ」
「見て……?」
「ユノアが、俺や父さんとは違う方法で戦いを終わらせるところを」
「違う……方法だと?」
フリットは完全に納得してはいない素振りを示しつつも、とりあえずは強硬な措置をとることは保留する形になった。
アセムは、そんな父と、外の様子を見比べながら思った。
(ゼハート、君ならこの戦い、どう見る?)
あの少女の苗字が「ガレット」だったことは、ゼハート・ガレットとは直接の関係はなかった。
だが、そのことがアセムに、あのかけがえのない友と過ごした学園での日々を思い起こさせるのにはじゅうぶんだった。
その思いの数々を重ねながら、アセムは妹の戦いを見守った。
そのとき、じつはフリットの心にも去来するものがあった。
(ユリン、もしも今なら……)
群青色の髪にすみれ色の瞳、名前はユリナ。
娘ユノアが新しい友だちだと連れてきたあの少女が、フリットに、かつて自分が守りきれずに死なせてしまったユリン・ルシェルのことを思い起こさせるのは必然だった。
かつてのユリンにそっくりなあの少女を、今ここで、自分の愛娘がその手で救済することができるのなら――。

(中略)

フォーンファルシアのビット攻撃は、後席のカノンがフィンファンネルを巧みに操って対処してくれている。
カノンのXラウンダー能力も高まっているようであった。
「ダメだわ、ユノア。ユリナの悪意がますます強くなってるの感じる」
「そんな……」
フォーンファルシアのフローラルビットが開いた状態は、その名のとおり花が咲いているような形状をしている。
それがいくつも、宇宙空間で光を放つ様子は、まるで星々の中に咲き誇る命のきらめきのように見える。
(……美しい)
脈絡なくユノアは思った。
攻撃用ビットは元々はシンプルに漏斗のような形をしており、フィンファンネルのように形状はもはや「フィン」であっても「ファンネル」と呼ばれるのがその名残りである。というような細かな経緯までは、このときユノアは知らなかった。
フォーンファルシアは機体自体もまた、丸みを帯びた優美な姿をしている。
(ガンダムもいいけど、どうせならああいう可愛いモビルスーツもよかったな……)
だがそんな空想にひたる時間など一瞬しか与えられない。
もはやユリナにとってはガンダムは憎き仇敵でしかないのだろうか。
「物理攻撃だけじゃ、消耗する一方だよ、ユノア。一気に決めないと」
「わかった」
限界についてのカノンからの示唆を受けて、ユノアも意を決した。
「ハロ、お願い。ユリナを助けてあげたいの。力を貸して!」
「OKハロ~。レインボーキュアメガキャノン発動ハロ」
ハロに憑依しているワクチンプログラムがまたデータを転送すると、HI-AGEデバイスが光る。
七色の光とともに現れたのは、意匠も新たな長身の砲。並々ならない風格を発している。
「スゴイ。これならいける!」
カノンがフィンファンネルで牽制している間にユノアはフォーンファルシアに照準を合わせた。
「ユリナ、今助けてあげる。頼んだよ、レインボーキュアメガキャノン」
祈るような気持ちでユノアは撃った。
「ガンダムレインボーキュアシュート・ハイパーメガ~~っ!」
進化前のライフルに比して数倍の優しくまばゆい光がほとばしり、それがフォーンファルシアを包んだ。
「やった。ユリナっ」
浄化完了!
ガンダムは闇のウイルスプログラムが除去されたフォーンファルシアに近づいた。
「ユリナ、ユリナ、聞こえる?」
しかしユノアの呼びかけに応答はなかった。
通信回線のステータスは接続中になっているが……。
と――
ガシンッ!
機体が衝撃を受けた。
フォーンファルシアの左手がガンダムの頭部を荒々しく掴んでいた。心なしか黒いオーラが機体の表層に渦巻いているようにも見えた。
「えぇっ」
「……浄化、できていない?」
ユノアとカノンが驚くコクピットに、心の奥底から絞り出した呪詛のようなユリナの声が響いてきた。
「……助けてあげる、そんな上から目線で」
「!」
「この私の絶望が、癒せるもんかぁーーーっ」
掴んだ手を放すと同時に蹴り飛ばしたガンダムへ向けて、ユリナの怨嗟のすべてを込めたように、フォーンファルシアの右腕がファルシアバトンを一振りした。
まるで魔法少女が魔法を使うかのような姿だったが、闇のウイルスプログラムは実際に魔法的なパワーを生み出している。
ガンダムは塵芥が吹き飛ばされるように薙ぎ払われた。
「きゃ~っ!」
まずい。
ガンダムAGE-XPエンゲージの機体がトルディアに激突しそうになる。
パイロットが悲鳴を上げている間に作動したARCによって、かろうじて減速した機体はコロニーの外壁に軟着陸する形になった。
「くっ」
体勢を立て直そうとしたユノアだが、ガンダムの姿勢が整う前に、追撃してきたフォーンファルシアに優位を取られてしまう。
ユノアたちをトルディアの外壁に押さえつけ、睥睨するように立ちはだかるフォーンファルシア、そしてファルシアバトンの先端がメインカメラのすぐ前に映っていた。
「どうして浄化できなかったのかしら」
「……何かが、足りなかったんだ、きっと、今のアタシたちに」
そんな無力感に襲われる2人の疑問に答えるかのように、ユリナの音声が通信回線から聞こえてきた。
「ムカつくんだよ、ユノア・アスノ。アンタみたいに、性格明るくて、友だち多くて、毎日楽しそうで、オマケに家柄だって……」
怨念に満ちたユリナの言葉にユノアは戸惑う。
「そんな、アタシはただ……」
戸惑うユノアにかまわずユリナは続けた。
「じゃあ知るがいいさ、私の地獄を。アンタなんかが絶対経験したことない悲哀を……」
ファルシアバトンがさらにメインカメラに押し付けられた。
「ユノアっ!」
カノンがおもむろにユノアの手を取った。
「流れこんでくる、ユリナの思念が」
「えっ」

(中略)

「そ、そんなことって……」
衝撃の事実にユノアは狼狽えながら絶句するしかなかった。
身体の震えと、涙が止まらない。
「ごめん……ユリナ、アタシのせいだ、アタシのせいで……」
そんなユノアをカノンは咄嗟に背後からギュッと抱きしめた。
「ちがうよユノア。ユノアは悪くない!」
HI-AGEデバイスは光を失って沈黙している。
「ユノア、悪くない。ユノア、悪くない」
ハロも通常モードで、カノンの言葉を反復するのみだった。
「アタシ……」
ユノアは無意識のうちにハロを手に取ると、ぬいぐるみか何かにそうするように抱きかかえた。
混乱が収まらないユノアに代わって、カノンが反駁した。
「ユリナ、聞いてる? あなたの気持ちはわかった。ユノアが落ち込むのも無理ない。でも、ちがうよ」
ユリナが自分の言葉を少なくとも音声としては耳に入力している気配を確かめながら、カノンは続けた。
「ユノアだって、ただ単にいつも幸せだったわけじゃない。お父さんと意見が対立したり、お兄さんへの気持ちに葛藤したり、アスノ家の名を継ぐ者としてボランティア先の人たちへの接し方に悩んだり……。そうやって、ちょっとずつ自分と周りの距離を調整しながら、自分の居場所を育てて、自分のやりたいことを見つけてきて、それで、今のユノアがあるんだよ。だから……」
そこで、またユリナがカノンを遮る。
「黙れ。黙れ、黙れ……。そのくらい何だ。それに、いつだってオマエがそばにいたんじゃないか。ひとりぼっちじゃなかったんじゃないか」
「黙らない! 聞いて」
先ほどとは逆にカノンがユリナへ向けて思念を送った。
「そんなことない、そんなことないヨ……なかったでしょ?」
「…………」
少しだけ、ユリナの居ずまいが先ほどまでとは変わったように感じられた。
「私とユノアだって、誤解して、すれ違って、ケンカして、いっぱい傷つけあって、それでも、そのたびに仲直りして、ここまで来たんだよ。だから、ユリナとも……」
「うるさい! うるさいうるさ~い!」
そんなやりとりを意識の隅に捉えながら、ユノアはようやく放心状態から回復してきた。
カノンが自分を弁護してくれていることは嬉しかった。
「ありがとう、カノン」
「アリガトウ、カノン、アリガトウ……」
ハロの復唱を聞いて、ユノアは心の中で思っただけのはずの言葉が、口から出ていたことに気づく。
そして、ふと思った。
そういえば、どうしてハロにはワクチンプログラムが憑依したんだろ?
こんなワクチンプログラムがなくて、あまつさえハロに取り憑いたりしていなければ、ユリナの「計画」はガンダムに邪魔されることもなく進んでいたはずだ。
いったい、このプログラムって?
(…………)
やおら頭をフル回転させるユノアは、やがてひとつの仮説に行き着く。
!!
そうか、そうなんだ、きっと。
証拠はなく、憶測の域は出ない。
でも、そう考えたときだけ辻褄が合う。
「まちがいない」
すべてが1本の線でつながった気がした。
「ユリナ!」
ユノアがいきなり叫んで驚いたのは、さしあたりカノンだった。
「ゴメン。……復~活!」
ユノアはふり向いて微笑むと指でピースサインをつくる。
そして、今一度、ユリナに語りかけはじめた。
「ねぇユリナ、あなたが闇のウィルスをプログラムしたとき、このワクチンプログラムもいっしょに生まれたんでしょう?」
「…………」
ユリナは沈黙をもって、ユノアの推論の否定をしなかった。
「それはユリナが、本当は誰かに止めてほしい。誰かに気づいてもらって、そうして、すべてリセットして、もう一度やりなおしたい……そう思ってたからじゃないの?」
「…………」
「心の奥底では、友だちがほしい、楽しく学校に通いたい、そう願ってたんじゃないの。だからこそ、転校してきて、アタシたちと友だちになったとき、毎日休み時間におしゃべりして、いっしょにお昼を食べて……、あのときあんなに楽しそうに笑ってたんじゃないの?」
ユリナの思念のゆらぎが少し伝わってきた、ような気がした。
「モビルスーツ大会のときも、学園祭のときだって、あんなに喜んで、はしゃいでたじゃない。あれは偽りじゃない。そうなんだとしたら、アタシ何か釈然としなかったんだ。でも、あれが、あれこそがユリナの本当の気持ちなんだって思ったら、全部納得いった」
「…………」
「だとしたら、やっぱり戻れるよ。アタシのこと、許してもらえないならしかたない。アスノ家としての責任の取り方は、これから考える。それでも……」
ここで息を継いだユノアは、軽く一瞬後ろを見返ってはカノンの手を握り返しながら続けた。
「それでもアタシは、ユリナともういちど友だちになりたい。ううん、今でも、今だって、つねにすでに友だちだって思ってる!」
ユノアの言葉を予測していたカノンが、ここでその意図を補う。
「そうだよ、ユリナ。また友だちとして、トルディアでいっしょに暮らそうよ!」
ユリナの心の慟哭が今度は明確な波動としてユノアにも感じられた。
「なんで……、なんでだよ。なんでそんなこと言えるん……」
「だって、それは……」
ピロ~~ン♪
ユノアがユリナの嗚咽に応えようとしたとき、突然ハロが通知音を鳴らして反応した。新たに眠っていたプログラムが覚醒したようだった。
「トモダチ、トモダチ、もうトモダチ……」
HI-AGEデバイスが、いつになく神々しく光りはじめた。
ユノアは反射的に操縦レバーを動かす。
スラスターを最大出力で吹かしたガンダムAGE-XPエンゲージは、フォーンファルシアを抱きかかえるようにトルディアの外壁から離れると、そのまま虹色の輝きに包まれた。
「何だあの光は。何が起こっている」
ディーヴァのブリッジでフリットは声をやや荒げた。
「あの光……?」
アセムもまた、ただならぬ輝きを訝らずにはおれない。
(でも、すごく激しく眩しいのに、なんだか優しくて、あたたかい感じがする……)
やがて他のクルーからは、口々に感嘆の声が漏れた。
「おぉー、あ、あれは」
「まさか、まさに」
「……天使!」
輝きが一段落した宙空に現れたモビルスーツ大の人影は、まさしく天使と見まごう気高い姿の、ユノアとカノン、そしてユリナもいた。
「ガンダムAGE-XPエンゲージ・ファイナルシルエット!」
やはりユノアたちと同じ比率になって見えているハロからの情報だろう。巨大ユノアは律儀にそう名乗ると、ポーズを決めた。
そうして巨大なユノアとカノンが軽く目配せして手を取り合うと、宙空を飛翔するようにゆっくりとユリナに近づき、そして優しく包み込むようにユリナを抱きしめた。
「……だって、それは、決まってんじゃん。好き……だからよ」
「そう、大好きなユリナの笑顔が見たいからだよ」
ユリナのすみれ色の瞳が潤んだ。
「ユノア……、カノン」
そんなユリナを慈しむように頬を寄せてユノアは続けた。
「今まで、いっぱいつらいことあったかもしれない……。でも、だからって、生きるのをあきらめないで。あなたが悲しいと、アタシも悲しい。あなたが嬉しいと、アタシも嬉しい。だからアタシは、アタシたちは、ユリナといっしょに
いたい……」

(後略)




 


[4:ウルトラマンの斜陽とギンガの挑戦]プリキュア時代の「男の子アニメ」の困難 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

仮面ライダーや戦隊シリーズと並ぶ、日本を代表するヒーローといえば、やはりウルトラマンを外すわけにはいきません。

ただ、ウルトラマンシリーズの定石では、主人公サイドは「科学特捜隊」のような公的機関であるところの怪獣防衛チーム。ウルトラマンに変身する主人公は、そのメンバーの1人であり、つまるところ組織の一員だという設定です。

すなわち、舞台設定の[ 公←→私 ]軸線においてはかなり「公」側に振れており、怪獣との戦いを定義する論理もまた、「正義と秩序」をゆるがせにはできない建前になっています。

これは、「友達との大切な日常を守る」ことに戦いの動機を発し、戦いが立脚する論理も「ケアとキュア」であるプリキュアシリーズにおいては[ 公←→私 ]軸線が大きく「私」側であるという点で、激しく対極的です。

(「正義と秩序/ケアとキュア」についてはこちらで再確認
  →「ロボットに乗って戦うプリキュアが明らかにした「ケアの倫理」の意義」)

したがってウルトラマンシリーズは、プリキュアシリーズ的な要素を取り入れることに関しては、仮面ライダーや戦隊シリーズと比べても、より困難な構造を抱えている、と言うことはできるでしょう。


むろんウルトラマンシリーズが、時代に合わせた進化を放棄しているわけでもありません。

特に21世紀最初のウルトラマンとなった『ウルトラマン コスモス』(2001)は象徴的でした。
怪獣を殺さない優しいウルトラマン」像を明示的に打ち出し、怪獣との戦いも、普通はおとなしいはずの怪獣を狂暴化させている宇宙エネルギー体を除去する「浄化」に重心が置かれたのです。

(→「#014 ウルトラマンと強さの周辺」)

これは今にして思えばまさに、後年においてプリキュアシリーズが採用する方式を、一足早く先取りしていたことに他なりません。

とはいえ、ネット上に残っている感想群をざっと見渡しても、旧来のウルトラマンを見慣れた視聴者からは違和感を訴える声も少なくなく、怪獣とのバトルもどうしても過去作に比べて地味な感じを醸し出すこととなったためか、試みとしては画期的だったものの、評判は必ずしも好意的なものばかりではなかったようです。

これはやはり、ウルトラマンというシリーズのフォーマットが持つ限界が露呈したとも考えられるでしょうし、時代が早すぎたということもあるでしょう。


さて、そんな『コスモス』からは10年以上が経過した2013年、ウルトラマンシリーズの新作がオンエアされる運びとなりました。

タイトルは『ウルトラマン ギンガ』

なんでも私が最初に入手した事前情報では、謎の敵によってすべてのウルトラマンと怪獣たちが小さな人形にされてしまった世界が舞台で、主人公はその人形と変身アイテムの力で(新作でのメインとなる「ギンガ」以外にも)さまざまな歴代ウルトラマンに変身するとのこと。

………いゃ、ソレって戦隊シリーズだと『海賊戦隊ゴーカイジャー』でやってたアレじゃないッスか!
まったくもぉバンダイったら商売に余念がないんだからw

そして、その次にキャッチした情報に、私は刮目しました。

主人公は高校生。そして
「科学特捜隊」のような怪獣防衛チームは存在しない――。

 BL140504UG01.JPG
§画像は放送画面より。この一連の記事中同じ

!!

なるほど、仮面ライダーにおける『フォーゼ』よろしく、ついにウルトラマンシリーズでも、「公」よりも「私」、「正義と秩序」よりも「ケアとキュア」に軸足を移した、「大切な仲間との日常を守る戦い」にシフトするという方針が、高らかに宣言された。
すなわち、プリキュアシリーズの興隆に学んで、そのエッセンスを大胆に取り入れることに挑戦するにちがいない。

そのように解釈できました。

……はたして真相はいかに??

かくして7月の初回放送を視聴した後、私は激しく感じました。

まるで……

( ゚д゚)ポカーン

プリキュアシリーズの第1話を見た後のような気分を!(^o^;)

ぃや、だって、ストーリーラインの組み立てが、完全にそのメソッドに則っています。

そしてメインとなるキャラは主人公とその友人の高校生たち。

敵は、心に何らかの負の要素を持った人間が謎の敵につけ込まれて闇のエネルギーを与えられて怪獣化した存在。

ウルトラマンギンガが怪獣を倒すと、その闇のエネルギーが浄化されて、元の人は救われるというシステム。

何より主人公が初変身に至るきっかけが、友だちの危機を救いたいという気持ち

おまけに人形化された状態のウルトラマンタロウが、主人公らにいろいろとアドバイスをする立ち位置で登場するのは、どう見てもプリキュアの妖精です。

………予想はしていましたが、まさかここまでプリキュア要素をきっちり忠実に踏襲しているとは!! (^^)

念のためツイッターなどを確認しても、ワタシ以外にも同様の感想を述べている人は多数。

ちょうどコレと同時期、『ドキドキプリキュア』では「5つの誓い」などという展開を進めていたり、追加登場した新プリキュアであるキュアエースの「意外な弱点」が変身時間制限だったりと、元ネタがウルトラマンシリーズとしか思えないことが複数盛り込まれて視聴者を驚かせていたのですが、そんなこんなで、2013年の夏は、まるでウルトラマンみたいなプリキュアと、プリキュアみたいなウルトラマンを見せられることと相成ったのでした。

特に『ウルトラマン ギンガ』4話は、主人公の幼馴染の女の子が怪獣化されてしまう原因が、もう一人の女子に対して感じた劣等感だったりと、『ハートキャッチプリキュア』(2010)との相似性が顕著でした
『ハートキャッチ』で特にフィーチャーされた人の「心」の問題は、やはり今日的に重要なテーマなのでしょう)。

最終回で、それまでに一度怪獣化された後に救われた人たちが、こぞって応援に駆けつけるシーンなども、同様に『ハートキャッチプリキュア』の終盤を彷彿とさせます。

クライマックスでは、その応援に駆けつけた人々が主人公らの母校である小学校の校歌を歌いながらウルトラマンを応援するのですが、これもまたプリキュアの劇場映画で恒例となっている「ミラクルライト」を使って観客が画面に向かってプリキュアたちを応援するときのシークエンスを連想させるものです。

 BL140504UG02.JPG

その他、全体的なプロットの組み立てのパターン、そして何より、若者たちが、自分の夢を育みながら未来に向かって歩んでいくことの称揚など、テーマ的にもプリキュアシリーズと重なるところは、全編にわたって見られました。

このことは、意地悪く言えば「天下のウルトラマンシリーズがプリキュアのような女児アニメの軍門に下った!」のでもありましょうが、そのような否定的な言い回しが当を得ているとは私は思いません。

もはや大上段に「正義」を標榜するヒーローでは描けないものも多い(奇しくも上述の『ウルトラマンコスモス』が新しい試みをしていた最中の2001年に起きた9.11テロがきっかけで「正義」への疑問が顕在化したものです)中で、ごくフツーの生活者が大切な日常を守るために戦う物語、そのトップランナーたるプリキュアのめざすところへ、ついにウルトラマンもやってきたことは喜ばしくこそあれ、何ら嘆かわしいことではないでしょう。

そうして、伝統フォーマットだった怪獣防衛チーム設定を思い切って廃し、フツーの高校生を主人公に据え、現代の若者の身近でリアルな葛藤や将来の夢にフォーカスしながら展開した『ウルトラマンギンガ』は、このプリキュア時代に求められるウルトラマン像に対するひとつの解答だったのではないでしょうか。

2013年、今の時代に望まれる新しいウルトラマンとして示された「ウルトラマンギンガ」を大いに評価したいと思います。


   


ただ、この『ウルトラマンギンガ』が挑戦したプリキュア的ウルトラマンという方向性は、やはりウルトラマンの枠組みでは描写が困難な部分も多々あることが課題として炙りだされもしました。

とりわけ、『ギンガ』のエピソード中では、主人公の友人たちも女子を含めて、複製された変身アイテムと例の人形の力で変身する回があったのですが、カワイイ女の子がかっこよく変身して戦う様子を爽快に描写するのは、巨大変身ヒーローの特撮作品という現状のウルトラマンのプラットフォームでは無理なことがあらわになりました。

むしろ、それを可能にできるものとして発展してきたフォーマットがプリキュアということになるのでしょうが、この点はウルトラマンシリーズの今後の課題となるでしょう。

ちなみに『ギンガ』の続編である『ウルトラマンギンガS』が、来たる2014年の夏からまた始まるらしいので、そのあたり、どんなふうに取り組まれていくのかは、引き続き見守りたいところです。


(2014/07/30)
続編の『ウルトラマンギンガ』始まりましたが、怪獣防衛チーム設定は復活しましたし、なんというか「普通のウルトラマン」に戻ってしまった感があり、いちおうは『ギンガ』の続編という建前を維持しつつも、前作とはまったく異なるコンセプトの物語展開になっています。
それはソレでフツーにおもしろいのではありますが、やはりこうなるまでには裏で「ウルトラマンなんだから、あんなプリキュアみたいな話じゃなくて、もっと男の子アニメっぽくしろ!」という、いわば【バックラッシュ】があったのではないかと想像されます。