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「性同一性障害」など性的少数者の人権、セクシュアリティの多様性、クィア論、男女共同参画などや、そうした観点に引きつけてのコミュニケーション論、メディア論など、ご要望に合わせて対応いたします。※これまでの実績などはお知らせブログにて

2014年のアニメが変態すぎる件 [多様なセクシュアリティ]

現実世界では、まだまだ性的少数者・セクシュアルマイノリティへの偏見や差別的な事案が少なくない実情が否定できませんが、ラノベやマンガ・アニメといったポピュラーカルチャーの世界では、そうした現実の一歩先を行く設定や描写が珍しくないのは、よく知られているところでしょう。

むしろ、必ずしも現実世界のそれらの実態を忠実に反映したものではないにしても、同性愛や性転換・異性装といった題材は、積極的に好まれ、ジャンルとして繁栄しているとさえ言えます。

そして、そんな中でも、この2014年のアニメを振り返ったとき、どうも従来よりさらに一段踏み込んだ作品が目立ったのではないでしょうか。


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例えば、この1~3月に放送された『桜Trick』。
(画像は公式サイトからと、以下は放送配信画面よりキャプチャ)

見てのとおり、女の子がいっぱい出てくる、いまどき珍しくはない日常系百合アニメのように見えますし、実際その範疇の作品と受けとめて差し支えはないでしょう。


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そして、特に仲が良いのがこの2人。


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かなりの親密度です。


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そして、ひょんなことからこんなことに…。


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…こうして、女の子どうしのけっこうディープなキスが描かれます。

同性愛をタブー視する人も少なくない中で、「こういうことも関係性のひとつとしてあってよいものだ」とばかりに、このような攻めた描写がおこなわれたのは、評価に値すると考えてよいでしょう。


   


次に、7~9月の『ひめゴト』。

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こちらも、公式サイトのキービジュアル(上。また以下の画像は放送配信画面よりキャプチャ)をパッと見た限りでは、日常系百合アニメの一種のように見えなくもありません。

しかし、この作品の主人公はひょんなことから女装状態で学校生活を送ることになった男子高校生(上の画像の中央)、つまり女装少年男の娘なのです。

原作コミックの掲載は「男の娘」専門誌で、ソコからかようにアニメ化の企画が通るというのは、やはり時代の流れでしょうか。


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しかも、作中で女装少年なのは、ひとり主人公のみならず、他にも複数の異性装者が登場人物として設定されています。
この場面などは、なんと画面の(というか、そもそも登場する主要キャラクターの)過半数が異性装者という事態に!
これが、この作品世界ではごくフツーのこととして成立しているのです。


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こちらの場面も異性装者が過半数を占めています。いわゆる「生まれつきの」「戸籍上」女の子なのは4人しかいません。 一見、数が合っていませんが………よく考えてくださいね(^^ゞ

この『ひめゴト』は、毎回「5分番組」であるショートアニメだったため、なかなか掘り下げた描写は難しく、安易なオチでまとめられることも少なくなかったですが、一方で性別の枠組みというものへの正鵠を突いた批評がさりげなくセリフに織り込まれたりもしていました。
第11~12話では「男性であっても女装すれば性暴力・性犯罪に遭うリスクが格段に増える」という問題にも、原作コミックよりもさらに丁寧に向き合っていたのは、やはり意義あることだったと考えられます。


   


そして、10月から放送中のこちら『俺、ツインテールになります』。

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これは、公式サイトのキービジュアル(上。また以下の画像は放送配信画面よりキャプチャ)から判断すると、女の子が変身して悪者などと戦う、いわゆるバトルヒロインもの、変身美少女戦士アニメだとジャンル付けられましょう。

実際、それは間違いではありません。


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しかし、この3人の変身美少女戦士、


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変身を解除すると……


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じつはレッドに変身しているのは男の子!


「男の子が変身したら女の子になる」

キタ━(゚∀゚)━!

従前より私は、プリキュアシリーズでは変身してプリキュアになるのが女の子ばかりな点については、それゆえの意義もある一方で、一度 何らかの取り組みが必要という観点から、変身後は瞳や髪の色が変わることは通例だし、変身したら若返ったり逆に大人になる事例もあるのだから、変身したら性別が変わることがあったって何の不思議もないと訴えてきました。
しかしながら2014年11月現在、プリキュアシリーズにおいては、男の娘を含めた男の子が変身するには至っておらず、せいぜい男装の麗人が変身するケースが前例としての限界点にとどまっています。

そんな中で【性別くらい変身の前後で変わったって、べつにゼンゼンかまわないじゃないか】というコンセプトに基づく設定を物語の主軸に据えた作品が、深夜枠とはいえ、堂々とアニメ化されたのは、ある意味ものすごく画期的です。

視聴者が思い込んでいる変身の概念と性別枠組みの意味づけを激しく揺さぶる、この『俺、ツインテールになります』は(他にも、さまざまなフェティシズムというものに対する考察のヒントとなる要素が世界観の中核に置かれていることともあいまって)、まさに多様なセクシュアリティの混沌を積極的に追究する観点から刮目に値すると私は思うのですが、いかがでしょうか。


   


ただプリキュアシリーズも、この件を看過していたわけではないようです。

『俺、ツインテールになります』のオンエア開始を約1か月後に控えた8月末、現在放映中の『ハピネスチャージプリキュア』第30話「ファントムの秘策!もう一人のキュアラブリー」では、主人公キュアラブリーの負の側面を具現化した闇プリキュア「アンラブリー」が敵として登場します(以下、画像は放送配信画面よりキャプチャ)

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プリキュアシリーズでは、このような敵として立ちはだかる闇プリキュアと戦うプロットは、しばしば見られます。
自己と向き合い自分自身を見つめなおすことは、プリキュアシリーズ主人公たちのような思春期の少年少女達にとっては重要な発達課題です。自分の中のマイナス部分・ネガティブ要素を引き写した存在と対決し乗り越えることは、成長イベントとして作劇上の意味もあるでしょう。


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で、今回登場したこの「アンラブリー」さん、


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じつは敵幹部の「プリキュアハンター・ファントム」さん自らの変身なのです。

………「男の子が変身したら女の子になる」、キテたよ(*^_^*)


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コレには仲間のプリキュアたちもビックリ Σ(゚Д゚)

視聴者もかなり意表を突かれましたが、大きいお友達にはむしろ好評でしたし、本来の視聴者層とされる幼児たちなら、ごく自然に受け止めたのではないでしょうか。

『俺、ツインテールになります』のように深夜枠ではなく、プリキュアシリーズのような時間帯の作品で、さり気なくこうした「性転換」要素が描かれたのは、かなり思い切ったことであり、その意味ではプリキュアシリーズもいろいろな制約の中で可能な範囲のことには取り組んでいるといえるでしょう。

このほか、本年度の日曜朝の一連の番組の中では、特撮ヒーロー『烈車戦隊トッキュウジャー』第34駅(話)「恋は大騒ぎ」にて、ちょっとした行きがかりから男どうしの濃厚なキスが描かれるのですが、これまたよく見ると、同性愛を安易に用いて笑いものにするような展開は巧妙に避けられており、それが男どうしだったこと自体は、作中では誰も否定的に反応しておらず、決してネタでも「禁断」でもなく、そういうこともフツーにあってよいものとして扱われてるように読むことも可能でした。
近年の「ニチアサ」はこのあたり非常にわきまえた大人の対応をしており、セクシュアルマイノリティがらみの話題は、ゴールデンタイムのバラエティ番組などのほうがよほどいつまでも子どもじみたネタ扱いに終始してると言えるのではないでしょうか。

   


……そして、このまま何もなければ、プリキュアシリーズもなかなかやるではないか~~で話はまとまっていたかもしれません。

しかし!
11月になって、まさかの予想外の展開がやって来ました。

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それが、この『プリパラ』。
(画像は公式サイトからと、以下は放送配信画面よりキャプチャ)

基本的には少女たちがアイドルとして切磋琢磨しながらライブ活動を競い合う、昨今の人気ジャンル、いわゆるアイドルアニメのひとつです。

オンエアは土曜の朝で、やはり直接には幼児が対象であることを念頭につくられている作品です。


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そんな『プリパラ』第18話「レオナ、全力ダッシュなの!」は、主要キャラクターのひとり、レオナ・ウェストちゃんが、双子の姉とともに、他のアイドル仲間たちと同じ学校に転校してくるところから始まります。


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レオナちゃん、舞台ではこんな感じでアイドルしてます。


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双子の姉・ドロシー(青いほうの子)とともに、いっしょに活動しています。

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姉・ドロシーと、もうひとりとともにユニットを組んで、こんなふうにライブをしているのです。


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……が、なんとこの回、転校してきたレオナは男子制服を着ている!?


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え゛、男子だったの!?
…と驚く一同ですが、作中で一同が驚いた理由は必ずしも男の子なのに女性アイドルをしている」ことであるようには描かれていません。
つまりレオナ本人の性別そのものが「衝撃の事実」であるような描写は巧妙に避けられています。


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そうして若干のやりとりを経ると、まぁそういうことがあっても良いよねと、全員が納得します。
そして、この件はこれで終了。この回の物語の主軸は、レオナの性格についてのものに移り、性別のほうはもはやどうでもいいこととして後景化されます。
しかも、その性格問題も、女の子としてアイドルしているという為人も含めて、いわゆる「ありのままで」イイという結論に至ります。

女だ男だというよりも「自分らしく」、それがアイドルとして、人間としての大切な個性なのだという肯定的なメッセージになっているのです。

詳しくはプリパラに精通した人のブログ記事が丁寧にまとめてくれています
 →プリパラ#18「レオナ、全力ダッシュなの!」/君薗ガーデン

これは素晴らしいの一言に尽きます。

このような、すべての人の自己肯定を応援する愛にあふれたアニメが観れるなんて、いまどきの子どもたちは幸せですね。

もちろん、すべての子どもたちにとって良質なコンテンツですが、とりわけ性別違和を抱える子どもたちにとっては、直接的な朗報でもあります。
MtFの多くは、子ども時代に見たいアニメが女の子向けだからと、見られない・見せてもらえないという憂き目に遭っています。
(例えば椿姫彩菜『わたし男子校出身です』中でもセーラームーンについて言及されていますし、私・佐倉智美にあっても『女が少年だったころ』で述べたように ひみつのアッコちゃんに対しては複雑な思いを持っています)
でも『プリパラ』では男の子のレオナ・ウェストちゃんも、フツーにカワイイ女の子としてアイドルしている!
これは性別違和をもつ「男の子」が『プリパラ』を視聴することの障壁を下げる大きな効果がありますし、そうした子どもを大いにエンパワーするものです。
男の子視聴者を排除しないことは、番組としてマーケットの間口を広めるメリットもあるでしょう。

まさか、土曜の朝の子ども向けアイドルアニメが、ここまでさり気なく、かつ丁寧にトランスジェンダルな登場人物を織り込み、ジェンダーの問題に適切に踏み込んだ作劇をおこなってくるなど、ちょっとノーマークでした。

いゃ~、これは読めなかった~!


   


というわけで、この2014年は、同性愛やトランスジェンダーを肯定的に取り入れたアニメ作品が、集中的に目立った形です。

ただ、単純には比較できないにせよ、1980年代にも『ストップひばりくん』や『パタリロ』、あるいは『らんま1/2』などはありましたから、じつのところ定期的に出現する定番の題材だと言えたりしなくもありません。

なにしろ日本は、歌舞伎やタカラヅカは言うに及ばず、クロスジェンダーパフォーマンスが盛んなお国柄です。
明治以降の近代化の過程で移入された西洋的な価値規準に、ともすれば隠されがちなことも少なくありませんが、身近な同性愛やトランスジェンダーにも本来は寛容な文化圏なのです。

このくらいのことは、べつに珍しくないし、古来より培われた、まさに伝統芸能でさえあるのかもしれません。
三橋順子さんが『女装と日本人』などで予て指摘していますし、古事記にも書いてあります

私たちは、この文化圏の特性をふまえ、外来の価値規準をむやみに内面化した風潮に流されて性的少数者を禁忌するのではなく、そこにある性の多様性の豊穣を、誰もが享受していけるようにしたほうが、犠牲者を出すことなくみんなで幸せになれるのではないでしょうか。


……えっ!?
古事記にも書いてある」は忍殺語が元で、根拠なんかない・口から出まかせだという意味のスラングなのでは……ですか?

いえいえ。
古事記といえばヤマトタケルの遠征譚が収められていますよね。

その件については、以前に書きました
ヤマトタケルは元祖◯◯◯だった!?


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ねっ、「男の子が変身したら女の子になる」、古事記にも書いてあるわけです、本当に(*^_^*)。