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[3:女の子はつねにすでにプリキュア]女の子は誰でもプリキュアになれるのか? [メディア・家族・教育等とジェンダー]

女の子がなったものがプリキュアである」。

すなわち前記事で述べたとおり、

プリキュアに憧れた体験を持つ子どもたちが、将来において、その憧れを包含した何らかの意思に基づいて何かになった結果としての、その「何か」がプリキュアと呼べるのだ………

というのは、かなり核心を突いた着眼点だったと自負しているのですが、さて、これは一般的に考えてまったくプリキュアっぽくない実存にもあてはめることが可能なのでしょうか。

ここで、リアリティレベルを徹底的にリアル寄りにして描かれたアニメ作品だと言えるサクラクエストをとりあげて、この点を考えてみましょう。

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※本記事中、画像は放送画面や公式のサイトからキャプチャしたもの


2017年4月から2クール半年間にわたって放映された『サクラクエスト』ですが、こちらも公式サイト(→ http://sakura-quest.com/ )によると、

木春由乃は、田舎から上京し短大の卒業を間近に控えた、いわゆる普通の20歳の女の子。東京には何でもあって、きっと特別な何かになれるのではないかと夢みて、30社以上の面接を受けるも、未だに内定はない。(中略)そんなある日、以前、一度だけ働いたことがある派遣事務所から、「地域の町おこしの一環で国王をやってほしい」との依頼がある。よくわからないが軽い気持ちで依頼先の間野山市に向かうことにした。
一時的に日本中でブームになるも、バブル崩壊に合わせて今ではほとんど見ることの無くなったミニ独立国。間野山市は、今なおミニ独立国を続けている、廃れてしまった残念観光地だった。

……というふうにイントロダクションされています。

そうして主人公・木春由乃は、イベントのための「一日国王」と思い込んで訪れたものの、じつは一年契約で、当初は東京に逃げ帰ろうとしたりしますが、やがて地元の実状に触れるうちに気持ちが変化し、「国王」という名の観光振興大使として、集まった同年代の女性4人の仲間とともに、地元の活性化のため観光協会の仕事をやり遂げる決心をするのです。

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作品自体は丁寧な行き届いたつくりの良作で、本当に地方都市が抱えるさまざまな問題にきっちり寄り添ってエピソードが積み上げられています。

活かしきれない観光資源伝統産業の先細り、シャッター商店街、忍び寄る過疎と高齢化、若者から見た魅力の不足……。
さらにはその寂れた同一市内でも中心部と山あいの集落との間に横たわる格差にも焦点が当たり、水面下で上層部が進める隣市との合併計画なども物語の射程に入ります。

まさに今プリキュアシリーズに夢中になっている子どもたちが大人になる頃にはさらに深刻になっているであろう、現代の日本が避けて通れないリアルな諸問題を生々しく浮き彫りにする硬派な社会派ドラマだと評価することもできましょう。

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それだけに物語はある意味、悪く言えば「地味」だという側面もあります。

アニメというジャンルではお馴染みの異世界も異能バトルも登場しません。
タイトルが「◯◯クエスト」になっているのは、いわば逆説でしょうか
(その観点からだと、作品の雰囲気というか描かれている内容は、むしろNHKの実写ドラマに近いとも見えなくはありません。
というか、何でも実写化すればよいというものではない中で、アニメ作品として話題になったコンテンツが次には実写映画化されるような流れはしばしばあることに鑑みたとき、この『サクラクエスト』こそ、NHKの《朝ドラ》、すなわち朝のNHK連続テレビ小説の題材として非常に好適なのではないかと考えます)

異世界・異能バトルとまでは行かなくても、同じく町おこしを目標にしていた前記事の『アクションヒロイン チアフルーツ』のように作中ショーのステージ上でなら変身やバトルがある、というわけでもありません
(同時期に町おこしを取り上げたアニメが放送されたという符合は興味深いですし、合わせて視聴してみるのもより深い見え方がして良いかもしれません)

地方都市・間野山の自然は美しく、四季の移ろいの味わい深さも、このアニメを制作する「P.A.WORKS」の得意技ということもあり、その描写は秀逸なものです。
が、当然ながら都会的なきらびやかさはメイン舞台には存在しませんし、若年人口は流出気味な地方都市だけに、主要5人以外の登場人物の高齢率もすこぶる高い。
全体的にひなびた雰囲気が漂うのも無理からぬことでしょう。

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そんな中での主人公ら主要メンバー5人が取り組む観光協会の仕事というのも、大変に地道なものでしかありません。

各種のイベントを企画してはいろいろな課題に直面。
裏方仕事に追われながらトラブルの処理
根回しのために観光協会とは必ずしも利害が一致していない商店会の人たちに頭を下げに行けば、皮肉を言われたりもしながら段取りを調整。

基本的に、そんなことの繰り返しだと言えます。

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それでも5人が力を合わせて知恵を出し合い、壁にぶつかって挫折しそうになりながらも、少しずつ周りの人たちを動かし、町を徐々に変えていく様子には、静かな、しかし着実なカタルシスがあります(ということなので作品がオモシロくないと言ってるのではありません)

まぁ、それだけ現実に則した地に足をつけた作劇だということになります。
したがって、主要登場人物の5人が華々しく美少女戦士に変身して悪者と迫力のバトルを繰り広げるような変身少女ヒーローもの的な展開からは対極にある世界観の作品だと言うこともできるでしょう。


  


ところがです。
それにもかかわらず、この『サクラクエスト』にはプリキュアシリーズの文法で読み解ける要素が多分に含まれているのです。

メタ的には「1年契約」に合わせて物語が構成されているというのもあるでしょう。

また「ひょんなことから◯◯王国の危機を救う使命を引き受けることになった話」だという共通項でも括れるのは、もしかしたら意図的にかぶせてあるのでしょうか
(物語の結末を「5人が《桜の王国》を取り戻した」と解することもできなくはありませんね)。

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のみならず、各々個性豊かな女性5人が集まり、互いに補いながら親密性や信頼関係を育み、共通の目標に向かって課題に取り組んでいく……といったフォーマットもまたプリキュアシリーズと共通しています。

途中の困難もなんとかいちおうの答えを出して乗り越え、仲間の結束は高まって周囲には協賛者も増えていく。
そんな過程で発揮される行動原理もプリキュアシリーズ10周年超時代のアニメキャラとして不自然さのないもので、あくまでも主体的。いわゆる「男に頼る(依存しきる)」発想もナシ(必要な協力の輪は相手の性別にかかわらずちゃんと広げていきます)。

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そうこうするうちに絶望を希望が凌駕して、未来への展望が開ける。
主人公らが、自分たちを信じてがんばった結果、世界が少し変わる。

同時に、そんな体験を経た主人公たちも、それぞれなにがしかの成長をする。
自分に自信が持てるようになり、自分自身の未来がちょっとだけ形になる。
自分の進む道の方向が見えてくる……。

このような物語の構造は、まさしくプリキュアシリーズそのものであります。

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『サクラクエスト』は現実世界のリアルな課題に立脚した作劇なので、シビアに甘くない世界を描いている分、テイストは違えられてはいますが、おおむねこうしたルートをたどる物語には、プリキュアシリーズに連想が働くところを禁じえません。

音楽クリエイター集団《 (K)NoW_NAME 》による主題歌群を聴き比べても、その歌詞にはプリキュアシリーズが子どもたちに向けているメッセージと通底するものが謳われている、やはりそう強く感じられます。

  


このように読み解けば、『サクラクエスト』のような変身もバトルもなしで若い女性たちが地道に奮闘する物語であっても、やはりコレはプリキュアシリーズの1バリエーション譚だと言えるでしょう。

その意味で、町おこし・地域の振興に奔走する5人は、本当にプリキュアなのです。

『チアフルーツ』とちがって『サクラクエスト』の主人公らは20代の女性たちですので、2017年現在だと保育園・幼稚園の頃から息をするようにプリキュアシリーズを視聴してきた世代よりは少しだけ上かもしれません。

だとしても、そう遠くない未来、幼いころにプリキュアに憧れた子どもたちが成人し、それぞれの場所で、それぞれの仕事・役割に就くことになります。

この『サクラクエスト』に鑑みるなら、それは「プリキュアになった」と呼んでいいのではないでしょうか。

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おそらくは、プリキュア世代の子どもたちが大人になった時代に、それぞれが置かれた場所で各々の役割に沿って、仲間といっしょに課題に取り組むとしたら、この『サクラクエスト』で描かれたように、プリキュアシリーズに込められたエッセンスを具現化した形になっていくでしょう。

いわば『サクラクエスト』がプリキュアシリーズの文法で読み解けるのは、その様子をアニメ化したものだからなのだとも言えます。

やはり「女の子がなったものがプリキュアである」なのです。

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そして、物語の肝要が主人公らの成長、自分の道をみつけるプロセスなのだとしたら、プリキュアになって何事かを成すということは、じつに「自分になる」ということ。

となれば、幼い子どもがプリキュアに憧れたそのとき、いつか何かになる将来の自分は、しかしもう今の自分自身でもあるわけです。

他ならぬプリキュアに憧れている幼い自分こそが、いつか将来の自分として自己実現を果たして何かになる――。

これはつまり「もうプリキュアになっている」に等しいということにはなりますまいか?

自分が自分であることを見失わない限り、自分はもうプリキュア。

そう、プリキュアシリーズを視聴しプリキュアに憧れた瞬間から「女の子はつねにすでにプリキュアなのである」なのです。

(……「つねにすでに」の無駄使い! というツッコミはナシで(^^ゞ)


◇◇


§その他ツイッターで『サクラクエスト』に言及したものを、補足として以下に貼っておきます






◇◇


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めぐみ

「ドラゴンボール超」の宇宙サバイバル編にはリブリアンというプリキュアパロディてんこ盛りのキャラクターがいますが(同じ東映作品)、変身前は美少女ですが変身後はデブキャラになってしまいます。
ネットでは「変身前に戻してくれ!」「飛んでぶーりんかよ」という声が多数です。
「容姿の一般受けするキャラ」しかプリキュアになれないのでしょうか?
今後「太めのプリキュア」は現れると思いますか?
by めぐみ (2018-01-19 14:23) 

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