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[4:ウルトラマンの斜陽とギンガの挑戦]プリキュア時代の「男の子アニメ」の困難 [メディア・家族・教育等とジェンダー]

仮面ライダーや戦隊シリーズと並ぶ、日本を代表するヒーローといえば、やはりウルトラマンを外すわけにはいきません。

ただ、ウルトラマンシリーズの定石では、主人公サイドは「科学特捜隊」のような公的機関であるところの怪獣防衛チーム。ウルトラマンに変身する主人公は、そのメンバーの1人であり、つまるところ組織の一員だという設定です。

すなわち、舞台設定の[ 公←→私 ]軸線においてはかなり「公」側に振れており、怪獣との戦いを定義する論理もまた、「正義と秩序」をゆるがせにはできない建前になっています。

これは、「友達との大切な日常を守る」ことに戦いの動機を発し、戦いが立脚する論理も「ケアとキュア」であるプリキュアシリーズにおいては[ 公←→私 ]軸線が大きく「私」側であるという点で、激しく対極的です。

(「正義と秩序/ケアとキュア」についてはこちらで再確認
  →「ロボットに乗って戦うプリキュアが明らかにした「ケアの倫理」の意義」)

したがってウルトラマンシリーズは、プリキュアシリーズ的な要素を取り入れることに関しては、仮面ライダーや戦隊シリーズと比べても、より困難な構造を抱えている、と言うことはできるでしょう。


むろんウルトラマンシリーズが、時代に合わせた進化を放棄しているわけでもありません。

特に21世紀最初のウルトラマンとなった『ウルトラマン コスモス』(2001)は象徴的でした。
怪獣を殺さない優しいウルトラマン」像を明示的に打ち出し、怪獣との戦いも、普通はおとなしいはずの怪獣を狂暴化させている宇宙エネルギー体を除去する「浄化」に重心が置かれたのです。

(→「#014 ウルトラマンと強さの周辺」)

これは今にして思えばまさに、後年においてプリキュアシリーズが採用する方式を、一足早く先取りしていたことに他なりません。

とはいえ、ネット上に残っている感想群をざっと見渡しても、旧来のウルトラマンを見慣れた視聴者からは違和感を訴える声も少なくなく、怪獣とのバトルもどうしても過去作に比べて地味な感じを醸し出すこととなったためか、試みとしては画期的だったものの、評判は必ずしも好意的なものばかりではなかったようです。

これはやはり、ウルトラマンというシリーズのフォーマットが持つ限界が露呈したとも考えられるでしょうし、時代が早すぎたということもあるでしょう。


さて、そんな『コスモス』からは10年以上が経過した2013年、ウルトラマンシリーズの新作がオンエアされる運びとなりました。

タイトルは『ウルトラマン ギンガ』

なんでも私が最初に入手した事前情報では、謎の敵によってすべてのウルトラマンと怪獣たちが小さな人形にされてしまった世界が舞台で、主人公はその人形と変身アイテムの力で(新作でのメインとなる「ギンガ」以外にも)さまざまな歴代ウルトラマンに変身するとのこと。

………いゃ、ソレって戦隊シリーズだと『海賊戦隊ゴーカイジャー』でやってたアレじゃないッスか!
まったくもぉバンダイったら商売に余念がないんだからw

そして、その次にキャッチした情報に、私は刮目しました。

主人公は高校生。そして
「科学特捜隊」のような怪獣防衛チームは存在しない――。

 BL140504UG01.JPG
§画像は放送画面より。この一連の記事中同じ

!!

なるほど、仮面ライダーにおける『フォーゼ』よろしく、ついにウルトラマンシリーズでも、「公」よりも「私」、「正義と秩序」よりも「ケアとキュア」に軸足を移した、「大切な仲間との日常を守る戦い」にシフトするという方針が、高らかに宣言された。
すなわち、プリキュアシリーズの興隆に学んで、そのエッセンスを大胆に取り入れることに挑戦するにちがいない。

そのように解釈できました。

……はたして真相はいかに??

かくして7月の初回放送を視聴した後、私は激しく感じました。

まるで……

( ゚д゚)ポカーン

プリキュアシリーズの第1話を見た後のような気分を!(^o^;)

ぃや、だって、ストーリーラインの組み立てが、完全にそのメソッドに則っています。

そしてメインとなるキャラは主人公とその友人の高校生たち。

敵は、心に何らかの負の要素を持った人間が謎の敵につけ込まれて闇のエネルギーを与えられて怪獣化した存在。

ウルトラマンギンガが怪獣を倒すと、その闇のエネルギーが浄化されて、元の人は救われるというシステム。

何より主人公が初変身に至るきっかけが、友だちの危機を救いたいという気持ち

おまけに人形化された状態のウルトラマンタロウが、主人公らにいろいろとアドバイスをする立ち位置で登場するのは、どう見てもプリキュアの妖精です。

………予想はしていましたが、まさかここまでプリキュア要素をきっちり忠実に踏襲しているとは!! (^^)

念のためツイッターなどを確認しても、ワタシ以外にも同様の感想を述べている人は多数。

ちょうどコレと同時期、『ドキドキプリキュア』では「5つの誓い」などという展開を進めていたり、追加登場した新プリキュアであるキュアエースの「意外な弱点」が変身時間制限だったりと、元ネタがウルトラマンシリーズとしか思えないことが複数盛り込まれて視聴者を驚かせていたのですが、そんなこんなで、2013年の夏は、まるでウルトラマンみたいなプリキュアと、プリキュアみたいなウルトラマンを見せられることと相成ったのでした。

特に『ウルトラマン ギンガ』4話は、主人公の幼馴染の女の子が怪獣化されてしまう原因が、もう一人の女子に対して感じた劣等感だったりと、『ハートキャッチプリキュア』(2010)との相似性が顕著でした
『ハートキャッチ』で特にフィーチャーされた人の「心」の問題は、やはり今日的に重要なテーマなのでしょう)。

最終回で、それまでに一度怪獣化された後に救われた人たちが、こぞって応援に駆けつけるシーンなども、同様に『ハートキャッチプリキュア』の終盤を彷彿とさせます。

クライマックスでは、その応援に駆けつけた人々が主人公らの母校である小学校の校歌を歌いながらウルトラマンを応援するのですが、これもまたプリキュアの劇場映画で恒例となっている「ミラクルライト」を使って観客が画面に向かってプリキュアたちを応援するときのシークエンスを連想させるものです。

 BL140504UG02.JPG

その他、全体的なプロットの組み立てのパターン、そして何より、若者たちが、自分の夢を育みながら未来に向かって歩んでいくことの称揚など、テーマ的にもプリキュアシリーズと重なるところは、全編にわたって見られました。

このことは、意地悪く言えば「天下のウルトラマンシリーズがプリキュアのような女児アニメの軍門に下った!」のでもありましょうが、そのような否定的な言い回しが当を得ているとは私は思いません。

もはや大上段に「正義」を標榜するヒーローでは描けないものも多い(奇しくも上述の『ウルトラマンコスモス』が新しい試みをしていた最中の2001年に起きた9.11テロがきっかけで「正義」への疑問が顕在化したものです)中で、ごくフツーの生活者が大切な日常を守るために戦う物語、そのトップランナーたるプリキュアのめざすところへ、ついにウルトラマンもやってきたことは喜ばしくこそあれ、何ら嘆かわしいことではないでしょう。

そうして、伝統フォーマットだった怪獣防衛チーム設定を思い切って廃し、フツーの高校生を主人公に据え、現代の若者の身近でリアルな葛藤や将来の夢にフォーカスしながら展開した『ウルトラマンギンガ』は、このプリキュア時代に求められるウルトラマン像に対するひとつの解答だったのではないでしょうか。

2013年、今の時代に望まれる新しいウルトラマンとして示された「ウルトラマンギンガ」を大いに評価したいと思います。


   


ただ、この『ウルトラマンギンガ』が挑戦したプリキュア的ウルトラマンという方向性は、やはりウルトラマンの枠組みでは描写が困難な部分も多々あることが課題として炙りだされもしました。

とりわけ、『ギンガ』のエピソード中では、主人公の友人たちも女子を含めて、複製された変身アイテムと例の人形の力で変身する回があったのですが、カワイイ女の子がかっこよく変身して戦う様子を爽快に描写するのは、巨大変身ヒーローの特撮作品という現状のウルトラマンのプラットフォームでは無理なことがあらわになりました。

むしろ、それを可能にできるものとして発展してきたフォーマットがプリキュアということになるのでしょうが、この点はウルトラマンシリーズの今後の課題となるでしょう。

ちなみに『ギンガ』の続編である『ウルトラマンギンガS』が、来たる2014年の夏からまた始まるらしいので、そのあたり、どんなふうに取り組まれていくのかは、引き続き見守りたいところです。


(2014/07/30)
続編の『ウルトラマンギンガ』始まりましたが、怪獣防衛チーム設定は復活しましたし、なんというか「普通のウルトラマン」に戻ってしまった感があり、いちおうは『ギンガ』の続編という建前を維持しつつも、前作とはまったく異なるコンセプトの物語展開になっています。
それはソレでフツーにおもしろいのではありますが、やはりこうなるまでには裏で「ウルトラマンなんだから、あんなプリキュアみたいな話じゃなくて、もっと男の子アニメっぽくしろ!」という、いわば【バックラッシュ】があったのではないかと想像されます。


 


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